2008年6月12日木曜日

安田記念回顧 2008


安田記念結果
ウオッカ1.32.734.003-04
アルマダ1.33.334.802-02
エイシンドーバー1.33.434.307-06
エアシェイディ1.33.434.013-14
スズカフェニックス1.33.434.110-10
コンゴウリキシオー1.33.535.601-01
キストゥヘヴン1.33.634.310-10
スーパーホーネット1.33.734.510-10

天候:晴 芝:良
上り4F:46.5 3F:34.8
12.1-11.1-11.4-11.6-11.7-11.4-11.4-12.0
(香港表記:23.3-23.0-23.1-23.4)


安田記念はウオッカが圧倒的なパフォーマンスを発揮して勝利した。
また相当に力のいる馬場状態だったためか上位はパワーのある馬が独占した。
この馬場で1.32.7という勝ちタイムだけでも相当な価値がある。

基本的には客観的な視点でレースを考察したいし、そう努めているのだが、
今回ばかりは完全に主観的な総括をしてみる。

実を言うとこのレースが終わった直後、もの凄い違和感を感じた。
何だかよく分からないのだが、応援しているウオッカが勝ったのに、
何となくモヤモヤしたものが心の中に残っていた。

ウオッカを応援はしているものの、予想では低い評価をしたということもある。
安田記念は切れ味ではなく持久力が問われるレース。
それ故に持ち前の切れを発揮するために脚を溜めなければならないウオッカには
厳しい戦いになるだろうと考えた。
結果は速い流れを前々から追走して、尚且つ鋭い切れ味を発揮するという神業。
予想は完全に外れた。
ただ心に抱いたモヤモヤ感はそれだけの理由ではない。

その理由は1日経って何回かビデオを見直して、だんだん分かってきた。
これまた完全に自分自身のことになってしまうが、
良い音楽も、良い映画も、良い小説も、本当に良いものは
最初に触れたときには何か違和感を感じてしまい、
とても素直にそれを受け入れられない、というか100%感動し切れない、
という傾向が自分にはある。(ただ単に鈍感なだけかも知れないが…)
そして何度かそれに触れている内に自分の中での価値が徐々に上がっていき、
ときにはそれが一生ものの存在になっていく。
結局、理屈では説明できないのだが…。
とにかく、今まで自分の中には存在していなかった新しいものに
対する反応はこんな感じである。

今回のウオッカの勝利はおそらくこれに当たる。
何回もレースとその後の岩田のパフォーマンス(こう言ったら失礼だろうか?)
を見ていたら、自然と感動が湧き上がってきた。

ディープインパクトの3冠やウオッカのダービーとは違う感動。
ディープインパクトのJCがそうだったように、
ウオッカもダービー馬として負けられないレースだったからか…?
単純に自分の予想を超えたパフォーマンスを見せつけられたからか…?

理由は分からないが、とにかくこういった場合、自分の中での価値は相当高い。
何ヶ月か後で、または何年か後で、ウオッカについて振り返ったとき、
1番強く思い返されるのはこの安田記念かも知れない。


もちろんレースそのものの価値も相当高いもので、
最後にこのレースをちょっとだけ客観的に考えてみたい。
ラップタイムを見ると、コンゴウリキシオーが全く淀みのない流れを
作り出したことが分かる。(香港表記で見ると特にそう感じる)
これによって後ろからいく馬にとってはかなり厳しい展開となった。

まず道中はほとんど緩まないので、脚を溜めることなどなかなかできない。
それでも前との差は広がっていくので、早めに捕まえに行く必要がある。
前を追いかけている段階で中途半端に脚を使ってしまうために、
ギアの切り替えも思うようにいかず、切れ味も発揮できない。

そんな流れの中、唯一抜群な切れを発揮したのがウオッカだった。
他の馬よりもう一段階上のギアチェンジをしたかのように、
いつもながらの究極の切れ味を見せつけた。
ペースの速い流れを先行して、それでもなお切れる脚が使えるのなら、
抑える必要など全く無くなってしまう。
結局、鞍上の独断が功を奏した形となった。


~各馬について~

ウオッカ
強かった。その一言でもいいくらいだが…。
今回速い流れを追走したのにも関わらず、究極の切れを発揮したことで
改めて能力の違いを見せつけられた感じがするが、
次戦以降、どのような場合にウオッカが勝つのかが気になるところ。

今回、切れる脚を使える条件が他の馬よりも幅広いことが分かった。
過去に出走したレースを見ても、有馬記念と宝塚記念以外は
どのような条件だろうと切れ味だけは発揮している。
上記2レースだけは長い距離でしかも道悪だったために、
追走だけでバテてしまったもので、これらは度外視できる。

問題は去年ダイワスカーレットに負け、ヴィクトリアマイルで負けた原因。
それは末脚の持続力にある。(体調面の問題もあるが)
ウオッカの見せる究極的な切れ味はおそらく他のどの現役馬にも負けない。
しかしながら、今回のようにペースが速い場合はともかく、
スローな流れであっても、ウオッカはラスト1Fがどうしても続かない。

となるとラストまで他の馬の脚色が鈍らないスローペースよりも、
ウオッカだけでなく他の馬もみんなラストが甘くなるような
ミドル~ハイペースの方が確実に可能性が高くなる。
ただそれでも持続できるような強い馬がいたら勝ち切ることは厳しい。

やはりもう1つG1を勝つにはどうしても持続力が必要となる。
馬体的に腰の甘さが抜ければもちろん1番いいのだが、
角居厩舎の抑えた調教ではそれが改善されるのかどうか疑問が残り、
ピークを迎えると思われる秋までに自然な成長で改善されるのを待つしかない。


エイシンドーバー
もともとこの流れに対する適正はあって、パワーも問題なく、
鞍上の福永も良い騎乗だった。
勝ち馬とは切れが全く違ったというだけで、
この馬にしてみればベストなレースだった。
それでも3着止まりは単純に能力の問題。

エアシェイディ
後方からよく追い込んでいる。上りはウオッカと最速タイ。
この流れに対する適正はあまりないと踏んだが、前半に無理をしない
脚質だけにあまり影響はなかったように思う。
パワーを必要とする馬場もこの馬にとっては歓迎すべきものだった。
この馬に関しては完全に自分の競馬に徹したレースとなり、
単純に能力を出し切った感がある。
つまり何回やっても、違う流れになってもこれ以上の着順は見込めない。
次は夏の北海道で自慢のパワーを見せつけて欲しい。

スズカフェニックス
武豊は全て順調にいっていたが、レースではあと1つ弾けない、
わからない、みたいなことをまたもや言っていたが、
はっきり言ってこれは馬の調子云々の問題ではない。
この馬は荒れ馬場を苦にするタイプではないので、
結局1F長い距離か、道中で緩まない流れに対する適正の問題だと言える。
安田記念は速い流れになるにも関わらず、先行馬が残ってしまう傾向があるが、
これはつまり後ろからいく馬が道中で脚を溜められずに、最終的には
相当な持久力が必要となるレースだということ。
スズカフェニックスはこのレースでも良い脚を繰り出しているように、
速いスピードを維持する力は相当高いものを持っている。
しかし完全なラスト1Fの粘り勝負となると話は別で、そこで勝ちきれるほどの
持久力を持っている訳ではない。
このことがスピードの持続力が問われる高松宮記念で勝ち負けできて、
より持久力を必要とするスプリンターズSでは惨敗するという結果に表れている。
したがって次に狙うべきはスプリンターではなくマイルCS。
そこだけに照準を定めれば良い結果が期待できるはず。

コンゴウリキシオー
ピークは明らかに過ぎているとは言え、力のあるところを見れた。
完全な逃げ宣言で、緩まない流れを作った藤田の男気にも感服。
これから中央でペースメーカーをやるにしても、
地方を完全制覇するにしても頑張って欲しい。

スーパーホーネット
出遅れが大きく響いたのは確かだが、それでも平凡すぎる末脚しか
使えていないことから、それ以外の原因が存在する。
恐らく距離とパワー不足が主な原因と言えるだろうが、
ほとんど緩まない流れからギアチェンジすることが出来なかった可能性もあり、
適正面で対応しきれなかったということも考えられる。
それでも能力は言うまでもなく高いものを持っているので、
適正の高い、秋の京都で頑張って欲しい。

香港馬について
2度とお目にかからないかもしれないので1頭ずつの考察はしないが、
明らかに太めに感じたアルマダが2着に残っていることから
グッドババに関しても実力自体は決して裏切るようなものではないと言える。
単純に大幅に減っていた馬体重、イレ込み、コースに不慣れな騎手など、
明白な原因は分からないが、力負けという訳ではないことは確か。
ブリッシュラックに関してはさすがに年で、馬体も明らかにズブそうで、
陣営もやる気があるとは思えなかった。

1つだけ全体を通して言えることは、香港競馬が緩んでからの切れ勝負に
なりやすいことは予想の段階で書いたが、そのような流れにならなければ
(道中で緩まなければ)切れ味を発揮できない馬がいる可能性があるということ。
もしかしたらグッドババに関しては思いっきりこのパターンかもしれない。
普段、日本より多少重い香港の馬場で走っているために
最低限の持久力はあるはずだと思っていたが、それだけでは安田記念のように
道中がほとんど緩まない流れを克服するのは厳しいのかもしれない。
やはり日本馬だろうと香港馬だろうと安田記念では持久力があることを
まず第一に確認しなければならないということだろう。
これは来年以降も是非覚えておきたい。


ウオッカの刻んだラップタイム


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